TERAMOTO くらしとterakoyaコラム

どうする?もうすぐやってくる未来のコト――労働者人口の減少と向き合う社会へ――
2023.08.09 業界コラム

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2023年3月、政府は『異次元の少子化対策』を発表しました。
日本の少子化は、2000年代に入ってから特に加速しはじめ、少子高齢化が進むことは避けられません。
今後、少子高齢化する日本はどんな未来がやってくるのか?
〝働く〟という視点から、ひも解いていきたいと思います。

今後の百年で待っているもの――日本の歴史上、類を見ない人口減少のスピード

《少子化を読み解くキーワード》
出生数……実際に生まれてきた赤ちゃんの数
合計特殊出生率……1人の女性が一生の間に産むとした時の子どもの数

日本の出生数は、最も多かった1949年(昭和24年)で約270万人、第二次ベビーブームと言われた1973年(昭和48年)ごろで約209万人。
慣習的に出産を控え、出生数が一気に下がる「ひのえうま」と呼ばれた1966年(昭和41年)でも、約130万人の赤ちゃんが生まれていました。
しかし2000年代から徐々に出生数、合計特殊出生率は下がり始め、少子化が進みました。
その加速度は政府の予測を上回る速さで、2021年の出生数は約81万人、2022年では80万人を割る見通しです。
この数は「ひのえうま」の年よりも少なく、過去最低の出生数になってしまいます。

少子化が進むということは、いずれ総人口が減っていくということ。
赤ちゃんから高齢者まで、日本の総人口のピークは2004年の約1億2700万人となっています。
しかし現状の少子化から予測される今後の人口推移では、ピークからわずか100年で明治時代の水準である約4000万人まで減少すると言われています。
この急激な変化は、日本の歴史を千年単位で見ても、今までにない急激な減少です。

少子化とワンセットでやってくる高齢化社会の先にあるものとは

《働く人の数を読み解くキーワード》
生産年齢人口……国内で行われる生産活動の中核を担う労働力になると思われる年齢の人の数。日本では15歳~64歳の人口が該当。
労働力人口……15歳以上の人口のなかで、実際に就労している人・完全失業者(就労する意思はあるができていない状態)を合計した数。

急激な少子化とセットでやってくるのが、高齢化社会。
日本では現在、65歳以上の人のことを高齢者としています。
総人口のなかで65歳以上の人が占める割合は、2030年代にかけてピークを迎え、約3人に1人が高齢者という状態になると言われています。
現在の人口推移から予測される、総人口における高齢者の割合は、2030年代頃からはわずかな増減を繰り返しながらも落ち着く見通しです。
一方で、労働力の要となる「生産年齢人口」の減少は、加速していくと予測されます。
そして、労働力の需要は高まっているのに人手が足りない状況は、未来ではなくすでに始まっていると言っても過言ではありません。

『2030年問題』を乗り越えるために、必要なものとは?

総人口の30%が65歳以上の高齢者になると言われている、2030年。
少子化と高齢化社会が進んだ結果、深刻な人手不足と、医療・社会保障制度の負担増が問題視されています。
避けがたいこの2030年問題を乗り越えるためには必要なものなのでしょうか。

働く人のレイヤーを広げる

2022年の労働力調査では、就業者数は約6700万人となり、前年に比べ10万人増加という結果になりました。さらに細かく見ていくと、特に女性と65歳以上での増加が目立っています。
・女性の就業者数は約3024万人で、前年より22万人の増加
・65歳以上の就業者数は約912万人で、前年より3万人の増加

このように、増加傾向にある女性や高齢者層が働きやすい体制を作ることが、人手不足解決の要になります。
現在「高齢者」と定義されているのは65歳以上となっていますが、ここ10年強で高齢者の体力・運動能力は約5歳若返っているといわれています。
このため、生涯現役という意識を持って、65歳以上でも働くことを望む人が増えてきました。
また、高齢化社会という面から見れば、〝支えられる側〟となる高齢者の年齢が10歳あがって75歳以上となった場合、無理なく支えられる可能性が高くなると予測されます。

働き方を多様化させる

出産や育児、介護、療養――年齢性別を問わず、さまざまな理由で、就労できない・キャリアを諦めるといった人は少なくありません。
そういった層の就労の機会を広げることも、人手不足解決のため重要です。
・就労時間、形態の見直し
・企業、雇用先の休業制度の充実
・リモートワーク等の活用
このような『働き方の多様化』は、今後の日本にとって必要不可欠なものです。

働く人の負担を減らす

ここ数年で注目されているのが、AIやロボットを活用した労働力。
ただ単にロボットが人の代わりに働くだけではなく、人手を補いながらも、働く人の負担を減らすことも重要視されています。
IoT(モノとインターネット)、AI、ロボットなどを取り入れたこの動きは『第4次産業革命』として、今後の日本に大きな影響を与えると言われています。

〝ロボット〟たちは、働く人たちと共存する未来へ

これまで工業用ロボットは、人の手で行うには熟練した技術が必要な作業や、同じ品質を保ちながら大量に生産するといった役割を担っていました。
ですが、労働力人口が少なくなっていくなかで、ロボットたちは新たな役割を持ち始めています。
導入事例の一例を、見てみましょう。

お掃除ロボット

家庭向けのお掃除ロボットはかなり普及していますが、業務用も様々な場所で取り入れられています。
人が乗れるほどの大型サイズから、高さ60センチ程度のミニサイズまであり、交通機関や大学、オフィスビル、商業施設など数多くの現場で導入されています。
お掃除ロボットが得意とするのは、床清掃。AIで掃除ルートを覚え、人や障害物は避けてしっかりと清掃を行います。
工程が多くあるトイレ清掃やゴミ回収などは人の手で、面積の広い床清掃はロボットで行うことで、生産性や業務効率がアップしています。

警備ロボット

様々な施設や場所で必要不可欠な仕事である、警備業務。
しかし警備業界は、危険が伴う場合や深夜勤務が多いことから、少子高齢化が進むなか深刻な人手不足が予想されています。
そんな人手不足を解決するため、AI搭載の警備ロボットが昨今注目されています。
自律型・遠隔操作型などの形態で、昼夜を問わず警備巡回できる警備ロボット。
暗視カメラや自動撮影機能など、警備ロボットの性能は日々進化しています。
今後増えていく、海外からの来訪者が多い国際的なイベントなどでも、活躍が期待されています。

配膳ロボット

外食産業で話題になっているのが、オーダーと配膳の自動化です。
外食業界は、顧客の注文を取りに行き、料理を配膳するホールスタッフの人手不足に悩まされていました。
そこで導入されたのが、ロボットで配膳するシステムです。
1台で多くの料理を運べるうえに、AIでテーブルを判断するので配膳間違いの可能性も低くなり、生産性と顧客満足度をアップさせました。
また配膳ロボットの導入は、労働力不足の解決だけでなく、従業員のストレス軽減にも繋がったという声もあり、離職率の低下も見込まれています。

ロボットやコンピュータソフトの発展、AIの進化がすすむと〝機械が人の仕事を奪っていく〟という印象を持つ人は少なくありませんが、人手不足の解決や離職率を抑えるために、ロボットたちが人とともに働く未来が、もう始まっています。

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