TERAMOTO くらしとterakoyaコラム

ホテル・宿泊業界における「従業員満足度(ES)」の重要性と職場環境改善のメリットとは
2021.10.27 ホテル全コラム ホテル経営・マネジメント 業界コラム

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企業経営において、従業員満足度を向上させることは重要です。労働力人口の減少に伴い、社員にやりがいを持って働いてもらうことが必要になったからです。しかし、具体的な取り組みについては詳しくない人が多いと思われます。

そこでこの記事では、従業員満足度を向上させる方法や得られるメリットについて、厚生労働省の資料などをもとに解説します。人手不足でお悩みのホテル・宿泊業界の経営者の方々はぜひご確認ください。

従業員満足度(ES)とは

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従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)とは、福利厚生、給与、職場環境、働きがい、人間関係などの諸要素をもとにした、従業員の満足度です。近年は業界を問わず、その重要性が認知され始めており、生産性向上には欠かせない概念だと考えられています。

このように注目されるようになった理由は、少子高齢化による労働力人口の減少です。かつては企業が社員を選ぶ側でしたが、現在では新たな人材確保が容易ではなくなりました。また、終身雇用を期待して入社する従業員も少なくなったので、良くも悪くも人材の流動性が高い時代となったのです。

要するに、従業員の定着率がそのまま会社の経営を左右しかねないような時代になったため、現代の企業は従業員満足度の向上に注力するようになったのです。

ホテル・宿泊業界の課題と従業員満足度(ES)

ここでホテル・宿泊業界の課題を整理します。厚生労働省の「2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況」によると、国内産業の中で「宿泊業、飲食サービス業」が最も離職率が高く、33.6%にのぼります。このデータから、高齢化・人材不足が大きな課題であることが分かります。

また、飲食サービス業が含まれているとは言え、およそ3人に1人が離職していることを鑑みるに、従業員満足度にも問題があると考えられます。逆に言えば、ホテル・宿泊業界が従業員満足度の向上に取り組むことで、多くのメリットを享受できる可能性があります。

以下では、従業員満足度の向上で得られるメリットを4つ紹介します。

メリット1:従業員一人ひとりのパフォーマンスがアップ

従業員満足度が高ければ、自然と業務に対するモチベーションがアップします。そうすると従業員同士のコミュニケーションも円滑になり、企業全体としての業績も上向きます。

また、従業員が能動的に働くので、新規事業の創出やイノベーションが起こりやすく、企業や従業員個人の更なる成長に繋がります。

メリット2:離職率が低下する

企業が従業員にとって魅力的な状態では、離職率が下がります。ここで実際に、離職率が下がった事例を1つ紹介します。

全国に事業所を持つ国内大手IT企業は、かつて30%近い離職率が問題になっていました。原因はワンマン経営と相次ぐ買収の失敗です。しかし、組織が窮地に陥ったタイミングで従業員各々の働き方の多様性を見直し、従業員のワガママに耳を傾けることにしたのです。

結果として、在宅ワークや休日の増加など、従業員一人ひとりが自分に合った働き方ができるようになり、最近では離職率が5%以下にまで低下しています。

従業員満足度の向上が人材流出を防いだ好例だと言えるでしょう。

メリット3:顧客満足度が高まる

従業員満足度が高い企業は、それに比例して顧客満足度も高くなる場合が多いです。これはただの印象論ではありません。実際に著名な経営学者であるジェームス・ヘスケットが、自身の著書の中で両者の因果関係(99%)を認めています。

例えば、モチベーションの高い従業員は自社サービスを隅々まで理解・分析しているので、必然的にカスタマーサービスの質が向上します。

メリット4:採用力が向上する

求職者が就職先を決めるにあたって、企業の離職率は気になるものです。もしも従業員満足度が高ければ、入社および定着してくれる可能性が高まるでしょう。

また、人材流出が少なければ余計な採用コストがかからず、経費削減になります。

※出典:厚生労働省「2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況」

従業員満足度(ES)を上げる方法

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企業の売り上げを増加させるには、従業員満足度の向上が重要です。一見すると、顧客満足度さえ高ければ、業績は伸びるように思えるかもしれませんが、実際にはそうではありません。このことについて、厚生労働省が「従業員満足度と顧客満足度を両立する」企業と「顧客満足度のみを重視する」企業を比較し、研究結果をまとめています。

これによると、従業員満足度と両立した方が業績・人材確保ともに優れているので、従業員満足度の向上は積極的に取り組むべきだと言えるでしょう。具体的な取り組みは下記に列挙します。

労働時間・休暇の是正

従業員は長時間勤務を課されたり、休暇が取れないような忙しさに苛まれると、当然ながら不満を感じるものです。その点、ホテル業は「長時間シフト」、「連続した休みが取れず、そもそも休日が少ない」、「肉体労働的な側面がある」といったように、過酷な勤務形態になりがちです。土日はむしろ繁忙期なので、他業界の友人と休日を合わせることもできず、ストレスをため込んでしまう人もいます。

これに対抗するには労働時間を制限し、連休を制度化するのが良いでしょう。この手法を取り入れている大手ホテルでは、離職率が抑えられています。また、1週間程度のリフレッシュ休暇を設定した別のホテルでは、同じく従業員満足度が向上しています。

いずれにしても、ルールとして「強制力」を持たせるのが効果的です。

福利厚生の見直し

一般的には各種施設の優待券などを付与することで、従業員の満足度を上げます。しかし、休暇が少ないホテル業においては少し事情が違う場合があります。例えば、会社から離れた場所にある保養施設の優待券をもらっても、忙しくて使う機会がありません。

この場合は例えばホテル内でマッサージを受けられるようにするなど、従業員のニーズを考えたうえで福利厚生サービスを提供するのが良いでしょう。

賃金等処遇や待遇の改善

ホテル業界には、能力よりも学歴を重視して雇用形態に差をつけるという慣習があります。例えば専門学校のホテル科出身の新卒社員と4大卒の新卒社員では、前者の方が明らかに能力・経験値が高いはずです。しかし、実際の待遇は専門学校出身の社員の方が悪いのです。このようないびつな評価制度が社内の雰囲気を陰鬱にして、いじめなどの引き金になり、従業員の満足度を低下させます。

この問題には能力評価制度の導入、賃金テーブルの整備などを行うことで、スキルや成果に応じた賃金が払われるようにして対応します。

多様な働き方を認める

家庭の事情でフルタイムでは働けない従業員のために、短時間正社員制度をやテレワークの導入を検討します。これによって、ホテル業ではなおざりにされがちな「ワークライフバランス」が整い、離職率が下がります。

※出典:厚生労働省「取り組みませんか?「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保」

従業員満足度向上は経営改善に繋がる

今回は従業員満足度の概要について解説しました。数多くのメリットが存在し、取り組み方によっては企業経営を左右しうることをご理解いただけたかと思います。とりわけ、ホテル・宿泊業界は人材不足が深刻な問題となっているので、今こそ既存の社員が働きやすい環境を作ることが大切です。具体的な施策が分からないときは本記事を見直して実施してみてください。

従業員満足度の向上が、いずれは顧客満足度の向上に繋がり、最終的には企業全体の利益を高めるはずです。

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