TERAMOTO くらしとterakoyaコラム

ゴミ収集車の巡回清掃の課題とIoTによる効率化事例
2020.10.14 業界コラム

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外出自粛や生活様式の変化に伴い、家庭ごみが増加しています。その影響で収集作業の遅れに悩まされる自治体も出ているようです。元来、ゴミ収集業界は収集車の移動効率や収集時間の遅延等の課題を抱えていますが、それが表面化した事例だと言えるでしょう。一方で人手不足という根本的な問題がある以上、現場の努力だけでなく「IoT」で課題を克服するのが賢明かもしれません。そこで今回はゴミ収集の課題をまとめた後、その解決策としてIoTの活用事例を紹介します。

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ゴミ収集における課題

 
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大阪府の四條畷市ではゴミ収集業務の効率化を目的として、収集ルート・走行時間・走行距離等を調査しました。当地域は旧市街地やニュータウンなど多様なライフスタイルが混在しているので、調査結果を他の地域に応用することも可能かと思われます。なお研究方法は、ゴミ収集関係機関へのヒアリング調査、世帯へのアンケート調査、GPS搭載調査などです。結果として、以下のような課題が浮かび上がってきました。

1.ゴミ収集車の収集ルートが非効率
かねてよりゴミ収集車は全てのゴミ集積所を巡回する必要がありました。作業員が直にゴミの堆積量を確認しない限り、収集の要否が判断できないからです。そのため仮にゴミが溜まっていなくても現場に向かう必要があります。特に近年は高齢化等の問題に対応するべく「戸別収集」が導入されているので、回収拠点も多く、移動効率が悪くなります。狭い道路や一方通行が多い地域ではなおさら効率性を重視しなければなりません。収集時間が遅延すると余分なコストがかかるので、収集が必要なゴミ集積所とそうでない所が判断できるようなシステムが求められます。

2.収集時間が曜日によってばらつく
家庭から出るゴミの量は毎日一定ではありません。そのため曜日によって収集時間が長くなる場合もあります。ただでさえゴミ収集業界は人手不足が深刻なので、作業員一人ひとりの負担が重くなります。また、収集時間が遅延するとコストがかさむだけでなく、近隣住民の生活にも影響を及ぼすので、当日のゴミの量を予測して適切な人員配置を行う仕組みが必要です。

ゴミ収集のIoT導入・実証実験の事例

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先述したように、ゴミ収集の主な課題は「非効率な巡回ルート」と「収集時間が長くなる」ことです。既にゴミ収集の現場ではIoTが活用され始めており、これらの課題解決に繋がる結果も出ているのです。ここではIoT化によってゴミ収集の効率化に成功した事例をいくつか解説します。

導入・実験例1:沖縄国際通りのスマートゴミ箱

■IoT導入の背景
・国際通りはデパート・レストラン・お土産屋・コンビニなどが並ぶ繁華街で、多くの観光客が訪れる。
・大量のゴミが持ち込まれるので、ゴミ箱を設置するとすぐにあふれてしまう。
・「あふれたゴミの片付け」や「店舗従業員によるゴミ箱の監視」によるコスト増大を危惧し、あえてゴミ箱を廃止する店が多いが、代わりに植え込みに捨てられるなど景観が損なわれていた。

■実験の内容
ゴミ箱の上部にIoTセンサーを設置。ゴミの堆積量がクラウドに送信されるので、監視センターでリアルタイムのモニタリングが可能になる。堆積量が80%を超えるとゴミ収集チームに通知が届くシステムになっている。

■実験結果
ゴミ箱の設置場所によって堆積量に偏りがあることが判明。このシステムが本格的に導入されると、人的コストを減らすだけでなく、「最適な巡回ルート」を確立できる可能性が出てきた。商店街からはゴミ箱の管理の手間が減ることを期待する声が上がっている。

導入・実験例2:都内の大学キャンパス内にスマートゴミ箱を設置

■IoT導入の背景
・同大学の研究チームのスマートシティ実現に向けた取り組みの一環。
・ゴミ箱のIoT化によってゴミ収集運用全般がいかに改善するか確認が必要だった。

■実験の内容
キャンパス内に「スマートゴミ箱」(ゴミ箱内部の堆積量を検知し、その情報を携帯電話回線を通じて収集要求を通知する機能を持つ)を設置し、ゴミ収集業務の効率性を検討。メカニズムとしては、ゴミ箱に取り付けられた赤外線センサーが堆積状況を管理し、インターネットを介して指定のスマートフォンにメールが送信される。

■実験結果
ゴミ箱の設置場所や季節、学内の催し物の有無などによってゴミの堆積量にばらつきがあった。特に夏と冬は長期休暇の関係で利用量が少なくなることが特徴的。

導入・実験例3:センサー付きのゴミ収集車で作業を効率化(藤沢市)

■IoT導入の背景
・藤沢市を含む湘南地域でスマートシティ化に取り組んでいる。
・ゴミの減量化に向けて、収集区域ごとのゴミの量が把握したい。
■実験の内容
ゴミ収集車の車体後部にドライブレコーダーを設置し、映像から各集積所に捨てられているゴミの数をカウント。個数はAI機能で自動的に算出できるだけでなく、ゴミ袋1つ当たりの重量も把握可能。
■実験結果
ゴミの排出量を地区別に把握できた。また、国勢調査のデータと組み合わせることで、どのような住民がいつ、どの種類のゴミをどれくらいの量排出するのか詳細に分析することができた。今後はこれらのデータをゴミ収集業務の効率化に活用することが期待されている。

導入・実験例4:スマートスピーカーでスムーズなゴミ出し(豊橋市・神戸市)

■IoT導入の背景
・住民から自治体に対して、ゴミの出し方や収集日に関する問い合わせが非常に多かった。
・視力の衰えた高齢者が音声のみでゴミの出し方を直感的に理解できるシステムが必要だった。
・家事や育児をしながらでも手軽にゴミの収集日が知れるようなシステムで、住民にとっての利便性向上を目指していた。

■本システムの内容
愛知県豊橋市や兵庫県神戸市などの一部の自治体で導入されている、スマートスピーカーを活用したシステム。具体的にはゴミの出し方についてスマートスピーカーに音声で質問することができる。例えば、ゴミの分別が知りたい場合には「スプレー缶は?」などと質問すれば、「危険ゴミです。中身を空にしてください」のような回答が返ってくる。また、「今日は何ゴミの日?」などと質問すると収集日についての回答が得られる。

■導入した結果
スマートスピーカーの開発元である大手ECサイトのスキル開発コンテストにおいて、部門賞を獲得するなど高い評価を得た。今後はより多くの自治体に展開することが期待されている。

上記がゴミ収集現場へのIoT導入事例の一部です。導入・実験例1~2はゴミ箱にセンサーを設置しIoT機能を持たせたもので、導入・実験例3はゴミ収集車自体をIoT化したものです。いずれもゴミの堆積量を事前に推測したり、リアルタイムで監視するなど、効率的な巡回ルートや人員配置に欠かせない機能だと言えるでしょう。業務が効率化されれば収集時間の短縮も期待できるので、ゴミ収集業界が抱える課題を解決するツールになりえます。

一方で導入・実験例4は住民が円滑にゴミ出しするためのシステムです。高齢者や体が不自由な人でも音声だけで操作できるのは大きなメリットでしょう。また、自治体側にもメリットはあります。なぜならばゴミ出しに対する問い合わせが減少することで、業務負担が減るからです。他にもゴミの不適正排出が減ることで作業員の手間も少なくなったり、適切な資源のリサイクルが可能になります。

要するに、ゴミ収集現場にIoTを導入することで、住民の生活、自治体の効率的な運営、地球環境の保全など様々なメリットを享受できる可能性があるのです。

IoTはゴミ収集の数々の問題を解消する

少子高齢化や働き方改革の影響で、ゴミ収集業界は人手不足が問題です。また、従来の収集システムでは非効率で無駄なコストがかかるので、ゴミ収集の抜本的な改革が求められています。このような状況に対応するため、国内外でゴミ収集のIoT化が進んでいます。今後はIoTの活用がスタンダードになる可能性があるので、各自治体は地域特性などを考慮した上で必要なシステムを取り入れていくことが必要でしょう。

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