TERAMOTO くらしとterakoyaコラム

コロナなどの感染対策で注目の『ゾーニング』。正しい意味と業界別設置例【医療・飲食】
2021.02.24 業界コラム

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新型コロナウイルスへの対応が急がれる中、「ゾーニング」という用語が注目されています。ゾーニングは様々な業界で用いられる概念で、身近な事例としては、日本のプロ野球がキャンプ地でのゾーニング徹底を宣言しました(1月20日)。
一方で、未だこの用語に馴染みがない方も少なくないと思われます。そこで本記事ではゾーニングの概要や活用例について、厚労省などの情報をもとに解説します。

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多様な業界で活用される「ゾーニング」とは

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ゾーニングとは、ある空間を「区分け」し、区分けした空間を「目的に沿って活用」することです。このように広義的な意味を持った言葉なので、本来は感染症対策に限定して活用される概念ではありません。ここでは導入として、感染症対策に直接関係しないゾーニングの例を紹介します。

テーマパークのゾーニング

日本最大級のテーマパークである東京ディズニーランドは、ゾーニングを効果的に活用しています。ディズニーランドは7つのテーマランドに分かれていますが、実はテーマランドごとに床の色やキャストの衣装を変化させているのです。そうすることでゲストはゾーンの変化を実感し、より楽しい雰囲気を味わうことができます。これはカラーマーケティングとゾーニングを組み合わせた好事例だと言えるでしょう。

他の事例としては千葉県船橋市に位置する「ふなばしアンデルセン公園」が挙げられます。公立公園でありながら、大手旅行情報口コミサイトのトリップアドバイザーで、日本の人気テーマパークトップ10入りを果たすなど話題のスポットです。そしてこの公園の人気の秘密が園内のゾーニングにあると言われています。具体的には子連れにおすすめの「ワンパク王国ゾーン」やカップルにおすすめの「花の城ゾーン」といった具合に細かく区分けすることで、ゲストの多用なニーズに応えているのです。

以上の様に、ゾーニングはテーマパークを魅力的なものに昇華させる目的で用いられることもあります。

土地利用計画でのゾーニング

次にゾーニングが土地利用計画に活用される事例を紹介します。土地利用計画とは、文字通り土地の利用方法を明示した計画です。この計画を策定する際には地図上で土地を区分し、更にその利用方法を示す必要がありますが、その役割を担うのがゾーニングなのです。テーマパークの例よりも複雑に思えるかもしれませんが、スペースの「区分け」を行い「それぞれのスペースでの利用方法を定める」という本質は変わりません。

具体例としては、小田急電鉄が開発した「下北線路街」が挙げられます。当エリアは元々、線路跡地で利用計画について議論が重ねられていました。
そして最終的に多様な個性を持った人が集まるという下北沢特有の長所を残しつつ、彼らの繋がりを後押しする場所を創ることを目的に、様々な施設が集められました。特に象徴的なのがSHIMOKITA COLLEGEという居住型教育施設で、ここでは学生から社会人が寝食を共にすることで次世代の育成を促しています。
このようにゾーニングは土地利用計画にも活用されています。

医療業界で活用される「ゾーニング」

医療業界でもゾーニングの重要性が認知されてきています。なぜならば医療従事者が被る感染リスクやクラスターの発生を防ぐのに有効な手段だと考えられるからです。
具体的に病院におけるゾーニングとは、感染症対策を目的に、病原体により汚染されている「汚染区域」と汚染されていない「清潔区域」を区分けすることを指します。
端的に言うと患者の病室は汚染区域、それ以外の場所は清潔区域です。ただし、日本ではゾーニングを活用できる病院と活用できない病院に二分されているのが実態です。

コロナ医療への参画に付きまとうリスク

ゾーニングが新型コロナの感染拡大に有効な選択肢ならば、一見「全ての病院がゾーニングを取り入れれば良い」と思えるかもしれませんが、日本の医療環境ではその実現は容易ではありません。新型コロナ患者を受け入れ体制を整えるには以下のような条件および念入りな準備が必要だからです。

・院内に感染対策の専門家がいる
・コロナ患者の院内の導線を決定
・職員の訓練
・ゾーニングが行える規模の病院である

このように万全の感染対策を講じるには様々な要因がありますが、海外に比べて日本は小・中規模の民間病院が多いという事情もあります。そのため早急にゾーニングをはじめとする受け入れ体制を整備するのは困難です。さらに医療現場の意見としては、国立国際医療研究センターの医師が今年1月のインタビュー記事にて、以下のような見解を示しました。

・日本では規模などの問題でゾーニング等を実施できない病院がある
・現状を劇的に変えられるような画期的な施策はない
・何より感染者を減らすことが大切なので、家族以外との会食や不要不急の外出は控える

以上の様に医療業界でもゾーニングが重要視されている一方、その活用は簡単ではないようです。

※出典:厚生労働省「宿泊療養における感染対策(非医療従事者向け)

飲食業界で活用される「ゾーニング」

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飲食業界におけるゾーニングとは、従業員・客の導線や空間のテーマを踏まえて、店内を区切ることです。身近な言葉に言い換えると、レイアウトやインテリアを整えることを指します。目的に沿って空間分割をするという基本は他業界と変わりませんが、飲食業界特有のポイントもあるので、以下で解説します

飲食店におけるゾーニングのポイント

飲食店の売り上げを伸ばすにはリピーターの獲得が欠かせません。そのためには、客に居心地の良さを感じてもらうことが重要です。無論、従業員が移動しやすいような導線づくりも大切ですが、ここでは客の心理面に訴えかけるためのゾーニング事例を紹介します。

1.客層に合わせた客席のゾーニング
店内をいくつかのゾーンに分けます。景観のいい席にはカップル、ファミリーには個室といった風に、幅広い顧客ニーズに対応できるようにデザインします。

2.出入り口付近(間口)を広くする
人は間口の狭い店や出入り口付近の席が埋まっているのを見た時に、待ち時間が長いと言ったネガティブなイメージを持ち、入店率が下がります。極力間口は広く取るのが基本です。

3.お酒を出す店はトイレへのアクセスを考える
居酒屋はトイレの利用率が高いので、客席からアクセスしやすい方が顧客満足度は向上します。

建築業界で活用される「ゾーニング」

建築業界では、既に家を建てる敷地が決まった段階で、ゾーニングを検討することになります。具体的には間取りを風呂・トイレなどの「水回り」、リビング・ダイニング・キッチンから成る「LDK」等に分け、おおまかに配置場所を決定します。住む人の快適性に直結するので、建築業界にとってゾーニングの活用は必須です。
また、新型コロナウイルスが蔓延後は、都内の某建設会社が病院の院内感染防止を目的として、無償のゾーニング提供を開始しました。これはゾーニングの実施に苦心する中小規模の病院を支援する画期的なサービスなので、以下でその一部を紹介します。

1.出入り口からエレベーターまでの導線を工夫
感染者と一般患者の出入り口を分け、エレベーターも別々にします。また、汚染範囲を最小にするため、感染者の搬送経路は最短になるようデザインします。

2.病棟の位置を工夫
感染者搬送用のエレベーターから個室の導線は短くします。さらに、感染者の個室は病棟の端の方にまとめて設置します。

3.感染者の生活が個室で完結
トイレや洗面台からクラスターが発生するのを防ぐため、感染者の個室内にトイレ・洗面を設けます。

「ゾーニング」は様々な業界で重要なツール

空間を区切り、目的に沿った最適な方法で利用することは、どの業界でも重要です。そのためゾーニングは新型コロナウイルス蔓延も相まって、各業界で必須のものとなってきています。
本記事で触れた業界だけでも、「プロ野球」「テーマパーク」「土地利用計画」「医療」「飲食」「建築」と枚挙に暇がありません。
特に医療業界では報道の通り、その重要性が説かれているので、今後の病院経営に欠かせない存在になるかもしれません。

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