TERAMOTO くらしとterakoyaコラム

客室清掃や厨房に関わる。ホテルの感染症対策・通常の衛生管理の重要性とポイント
2020.04.08 業界コラム

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近年、各業界で衛生状態に関する規定などが厳しくなっています。ホテル業界も例外ではなく、普段の衛生管理はもちろん、感染症が流行した際の対応にも気をつけなければなりません。今回は、旅館業の衛生管理要項をもとに、客室清掃・厨房などの衛生管理の規定とポイント、さらに感染症の予防対策の実例をまとめました。

ホテルなど宿泊施設が行う感染症対策「特別衛生対応」とは

2020年2月に発生し、大流行した感染症に対して「特別衛生対応」を実施したホテルがたくさんありました。ホテルなどの宿泊施設にとって、万が一、利用者や従業員に感染者が現れた場合、利用者の激減や休業などのリクスが高まります。そのリスクを低減するために実施するのが「特別衛生対応」です。具体的な方法は各施設によって異なりますが、その代表的な例を以下でまとめたので確認してください。

特別衛生対応の例

・消毒液の設置、利用の推奨
館内の各所(フロント、化粧室、レストランなど)に消毒液を設置。従業員だけではなく、利用者にも使用を呼びかけます。さらに通常の消毒液ではなく、アルコール系などのより強力な消毒液を設置する施設も少なくありません。

・朝食メニューの変更、殺菌強化
バイキング形式の朝食など、感染リスクが高まるメニューを変更するケースもあります。また、食器の殺菌・除菌を徹底します。

・清掃作業の消毒強化
特別衛生対応において、日常清掃における感染症対策はとても重要です。例えば、客室ではドアノブや蛇口、バスカーテンなど前泊者と利用者が触れやすい場所は徹底して消毒や除菌を行います。また、ホテルによっては除菌脱臭機などの機器を各部屋に導入し、客室の除菌対応を徹底する施設もあります。
これはホテルのフロントや大浴場、廊下、エレベーターなどの共用部も同様です。

・ホテルスタッフの予防を徹底
ホテルのスタッフからの感染を防ぐため、出勤時に体調を自己申告したり、体温などの報告を義務づけるなど体調管理を徹底するホテルも少なくありません。
・利用者の体調管理の対応
体調が優れない利用者はすぐにスタッフに報告するように促す張り紙を作成するなど、早期発見、早期対策を行えるよう環境を整備します。

以上が、特別衛生対応の実施例です。早期に対策を行わなければ、市販・業務用の消毒液が不足するなど、対応が困難になってしまう可能性も考えられます。また、客室清掃や共用部の日常清掃は消毒・殺菌を行う重要なポイントになります。管理者はもちろん、清掃スタッフ自身も日頃から消毒すべき場所を把握することで、よりスムーズに特別衛生対応を実施できるのではないでしょうか。

国が定めた「旅館業の衛生等管理要領」とは

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旅館業は、客室や浴場などの各場所の衛生管理は厚生労働省の「旅館業における衛生管理要領」によって指導されています。この衛生管理要項は、2000年に当時の厚生省が作成し社会情勢や旅館業法の改正などによって都度、改正されています。旅館業の衛生管理要項を参考に各自治体が基準を設けて、ホテルなどの開業時の「許可・不許可」などを判断しています。これらは民泊施設にも適用されることも覚えておきましょう。旅館業の衛生管理要項は、非常に細かく衛生管理のポイントを記載しています。管理者はもちろん、普段は衛生管理要項を知る機会が少ない清掃スタッフも、ぜひ一度内容を確認してみてはいかがでしょうか。

旅館業の衛生管理要項(一部抜粋)

■客室の構造設備
・収用定員に応じて十分な広さを有し、清掃しやすい構造であること。
・客室の床面積は、7㎡(寝台を置く客室にあっては9㎡)以上であること。

■浴室
・清潔で衛生上支障のないよう清掃が容易に行える構造であること。
・浴槽及び洗い場には、排水に支障が生じないよう適切な大きさの排水口を適当な位置に設けること。
・オーバーフロー回収槽(以下「回収槽」という。)の水を浴用に供する構造になっていないこと。

■トイレ
・便所を付設していない客室を有する階には、共同便所を設けること。この場合、調理室及び配膳室から適当な距離を有していること。

客室や浴室は、設計段階から清掃しやすさに重点を置くように指導されていることが分かります。また、上記のほかに、廊下や脱衣場、サウナ、洗面所など宿泊施設の各場所に非常に細かく基準が設けられています。また、2018年の改正で主に客室について大きな変更点がありました。詳細は「旅館業における衛生等管理要領の改正について」で新旧の衛生管理要領を比較いているので確認してください。

※出典:厚生労働省「旅館業における衛生等管理要領の改正において

HACCP(ハサップ)の対応を見据えたホテルの衛生管理

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ホテル業界の衛生管理における大きな動きの一つが、食品衛生管理の国際標準「HACCP(ハサップ)の制度化です。ハサップは衛生管理を「見える化」することで、旅館業の大きなリスクである食中毒やノロウイルス、食物アレルギーの事故を防ぐだけでなく、業務改善、効率化、従業員の衛生意識の向上などのメリットもあるとされています。
そのHACCP(ハサップ)のポイントを全旅連がまとめた「旅館・ホテルにおけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書」から抜粋し、調理の手順、厨房の場所別に紹介します。

■原材料の納品時の確認
確認方法は、外観・臭い・包装状態・表示(期限、保存)・品温などを確認する。腐敗や包装の破損、消費期限が切れている原材料は、食中毒などの原因になる微生物が増殖している可能性があります。

■冷蔵・冷凍庫の温度確認
温度管理が不適切な場合、有害な微生物が増殖する可能性があります。始業前もしくは終業後の1日1回以上は、温度計で全ての庫内温度を確認しましょう。一般的に冷蔵庫は10度以下、冷凍庫は-15度以下が適温とされています。
もし、適温よりも庫内温度が高かった場合、設定温度を再調整し、故障の疑いがあればメーカーに問い合わせましょう。その間保存していた食材は、状態を確認し、傷んでいる可能性があれば使用しないようにしましょう。

■トイレの洗浄・消毒
「旅館・ホテルにおけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書」では、トイレの清掃・消毒も厨房の衛生管理に間接的に関わるとされています。その理由として、大腸菌やノロウイルスなどの微生物はトイレで発生しやすく、厨房のスタッフが意図せず汚染されてしまう可能性があるのです。例えば、ドアノブや水洗レバーなどが要注意で、利用者が嘔吐した際などは特に注力して清掃しなければなりません。利用者と従業員のトイレの利用状況などを共有しながら、常に一定の清浄度を保つことを心がけましょう。

客室・厨房などホテルの衛生管理を徹底しよう

ホテルや宿泊業界にとって、感染症は経営に大きな影響を与えかねないリスクです。衛生管理を徹底すべき場所は、厨房・フロント・客室・共用スペースなど様々。施設で働くすべての人がそれぞれの注意点を把握し、適切に対処しなければなりません。インフルエンザなど毎年、活発になる時期が明らかになっている感染症もあるので、普段の日常清掃から衛生管理を徹底しておくべきではないでしょうか。