客室清掃は日常清掃。ホテル清掃の定期清掃の種類と外注のメリット・デメリット
2019.09.27
ホテル全コラム
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ホテル清掃は、大きく「日常清掃」と「定期清掃」の2つに分けられます。そして、これらの清掃業務は自社スタッフに任せることもできますが、専門の清掃業者に依頼するホテルも少なくありません。ここでは、ホテル清掃の種類および清掃を外注するメリットとデメリットについて解説していきます。
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ホテルの日常清掃とは
ホテルの日常清掃とは、客室清掃をはじめとした日常的に行う清掃業務のことです。日常清掃の内容はホテルによって異なりますが、ここではその一例をご紹介します。
客室清掃
客室清掃は、チェックアウトからチェックインまでの短い時間内で完璧にこなさなければいけません。具体的な作業内容としては、ベッドメイクや掃除機がけ、家具などの拭き掃除、トイレ掃除、浴槽の掃除、シンクや鏡の掃除などがあります。また、ゴミ回収やアメニティの差し替え、シーツや各種タオル類の回収も併せて行います。
大浴場
ゆっくりとリラックスできる大浴場は、多くの利用客が楽しみにしている場所の1つです。浴場は毎日掃除しなければ、水垢などがすぐに発生してしまいます。思い通りの快適な時間を過ごしてもらえるように、床のヌメリなどは日常清掃でしっかり落とさなければいけません。また床やイス、桶、シャワーなどの掃除のほかに、シャンプーなどの備品のチェックも行います。
厨房
床や洗い場、調理器具、作業台などを含め、隅々まできれいにしていきます。ゴキブリ対策のためにも重要なポイントだといえるでしょう。
外周
ホテルの外周は利用客にとって最初に目に入る場所のため、常に美しい状態を保っておく必要があります。ポイ捨てされたゴミなどは、できるだけ早めに回収しなければいけません。また、駐車場やテラスも同様です。
ホテルの定期清掃とは
毎日行う日常清掃に対して、月単位、年単位で必要に応じて定期的に行うのが定期清掃です。定期清掃では、日常清掃では取り除ききれない汚れもしっかりと落としていきます。ここでは、その一例をご紹介します。
カーペット
カーペットは、日常清掃の掃除機がけだけでは完全に汚れを落とせないことがほとんどです。特に食べこぼしなどによるシミがある場合は手作業による清掃が必要になるため、かなり時間がかかるケースもあります。カーペットの定期清掃では、普段は行わない前処理やシャンプークリーニングを行うことでカーペットを傷めずにきれいな状態に戻していきます。
石材
ホテルの美観を保つために重要な石材ですが、種類や場所によって正しい清掃方法が異なるため、きれいに保つことは簡単ではありません。そのため、定期清掃で丁寧なメンテナンスを行う必要があります。定期的にメンテナンスを行うことによって、美しいままの状態がより長続きします。
ガラス面
ガラス面は手が届く範囲であれば日常清掃できれいにすることができますが、窓の外側などはなかなかきれいに掃除することができません。しかし、ガラス面が汚れているとホテルのイメージダウンにつながってしまいます。そのため定期清掃できれいな状態にする必要があります。
ホテル関係者なら知っておきたい。清掃業務を外注するメリットとデメリット
ホテルの清掃業務は自社スタッフのみで行うことも可能ですが、専門の清掃業者に外注するという方法もあります。
ただし外注にはメリットとデメリット両方があるため、しっかりと比較検討したうえで清掃方法を決める必要があるといえるでしょう。
メリット
清掃以外の業務に集中できる
スキルの高いスタッフに依頼できる
スタッフの負担・不満が軽減される
清掃器具の購入が不必要
デメリット
コストがかかる
スタッフの意識が育たない
清掃業者によって得意・不得意がある
以下では、これらのメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。
メリット1:清掃以外の業務に集中できる
日常清掃、定期清掃のどちらもホテル清掃にはかなりの時間と労力がかかります。負担の多い業務を外注すれば、他の業務に当てられる時間が多くなるといえるでしょう。例えば宴会準備などの業務に集中できれば、利用客の満足度も上がるはずです。ホテルの評価アップにもダイレクトにつながるといえるのではないでしょうか。
メリット2:スキルの高いスタッフに依頼できる
自社スタッフで清掃を行う場合は、新人のスタッフには一から教育しなければいけません。最初のうちはやり直しが多く、なかなか効率的に清掃を進められないこともあるでしょう。結果的に先輩スタッフの負担になってしまうリスクもあります。専門の業者なら清掃スキルの高いスタッフが揃っているので、より質の高い清掃が期待できるといえるでしょう。
メリット3:スタッフの負担・不満が軽減される
限られた時間内で完璧な仕事をしなければいけないホテルの清掃業務は、スタッフにとって大きな負担になります。そのため、自社スタッフだけに任せていると不満にもつながりかねません。しかし、清掃業務を外注すればスタッフの肉体的・精神的負担が大きく軽減されます。仕事全体に対する不満も少なくなり、他の業務におけるパフォーマンス改善も図ることができます。
メリット4:清掃器具の購入が不要
見落としがちなポイントですが、自社スタッフで清掃を行う場合には当然ながら清掃器具の購入が必要です。清掃を効率化するために新しい器具を揃えようと思うと、かなりの出費を覚悟しなければならないこともあるでしょう。しかし、専門業者に依頼する場合はその心配はありません。性能の良い最新の清掃器具を使って掃除したい場合には、特に大きなメリットになるといえるでしょう。
デメリット5:コストがかかる
ホテル清掃を外注するデメリットとして真っ先に挙げられるのは、コストがかかるということです。外注の値段は依頼する清掃内容や業者によって異なりますが、自社スタッフで清掃を行う場合と比べるとコストがかさむケースが多いです。自社スタッフの給与や残業代を差し引いても、やはり割高だといえるでしょう。
デメリット6:スタッフの意識が育ちにくい
清掃を外注していると、自社のスタッフの美化意識が育ちにくいといえます。やはり、ホテル清掃の大変さを知っていればそれだけ汚れにも敏感になります。外注していると汚れに対して無頓着になるため、きれいな状態を保ちにくくなるといえるでしょう。
デメリット7:清掃業者によって得意・不得意がある
一口でホテル清掃と言っても、その種類は多岐にわたっています。そのため「客室清掃は完璧だが浴室清掃はイマイチ」など、業者によって得意・不得意があることが一般的です。さらに、すべての清掃内容に対応していないという業者もあります。清掃の種類ごとに外注するとさらにコストがかさむため、外注時には依頼する業者は慎重に選ぶようにしてください。

自分で特殊清掃を行うリスク
特殊清掃は、孤独死や事故死、事件現場など、一般的な清掃では対応できない特殊な状況で行われる清掃作業です。一見すると清掃という言葉の印象から「自分でもできるのでは?」と考えがちですが、実際には多くのリスクが伴います。
はじめに挙げられるのが、感染症のリスクです。特殊清掃の現場には血液や体液、腐敗した体組織などが残されていることがあり、それらにはさまざまな細菌やウイルスが含まれている可能性があります。適切な防護装備や消毒手順を理解していなければ、作業者自身が病気に感染する危険があります。
次に、精神的な負担も無視できません。現場は非常にショッキングな状況である場合も多く、身内であっても冷静に対応できるとは限りません。心理的なトラウマを負ってしまうケースも少なくないのです。
さらに、臭いの除去や害虫の駆除といった専門的な工程も必要です。通常の掃除では対処できず、知識や機材がなければ、結果的に再び清掃が必要になり、労力やコストが倍増してしまう恐れがあります。
特殊清掃を業者に頼む理由
特殊清掃のリスクを回避するには、専門の業者に依頼するのが最適です。業者は適切な防護服や消毒薬、臭いの元を分解するオゾン脱臭機などを用い、安全かつ迅速に作業を行います。
また、遺品整理や原状回復のサポートも含まれている場合が多く、一連の作業をまとめて任せることができるのもメリットと言えるでしょう。専門知識と経験に基づいた対応は、作業の質を保証するだけでなく、遺族の精神的負担も大きく軽減してくれます。
何より、法的な問題や近隣住民への配慮も重要です。不適切な清掃で悪臭や衛生トラブルが発生すれば、近隣からの苦情やトラブルにつながることも。プロに依頼することで、そうしたトラブルを未然に防ぐことができます。
業者に特殊清掃を依頼する適切なタイミング
特殊清掃が必要な状況が発生した場合、できるだけ早く専門業者に依頼することが重要です。特に、孤独死や事故死などで遺体の発見が遅れた場合、遺体の腐敗が進んで悪臭や体液が広がり、室内の損傷や害虫の発生が急速に進行します。こうした状態を放置すると、清掃だけでなく建物の修繕まで必要になるケースもあり、そうなると費用や作業期間が大幅に増えます。
また、精神的な負担を軽減する意味でも、早めの依頼が適切です。遺族が現場の状況を目にすることなく、プロの手で丁寧に対応してもらえるため、心のダメージを最小限に抑えることが可能になるからです。悪臭や害虫の被害を防ぐためにも、早急に対応しましょう。
特殊清掃の具体的な内容
特殊清掃は、一般的なハウスクリーニングと異なり、死亡事故や孤独死、事件現場、自殺など、特殊な事情で汚染された空間を安全で衛生的な状態に戻すための作業です。作業内容は多岐にわたります。
最初に行われるのは、汚染物の除去です。体液や血液、腐敗物が染み込んだ床材や家具、寝具などを適切に取り外し、感染症防止のために専用の袋で密封して廃棄します。次に、消毒・殺菌作業が行われ、細菌やウイルスの拡散を防ぎます。高性能の薬剤を用いて空間全体を処理し、安全な環境へと整えます。
さらに、臭いの除去作業も行います。特に腐敗臭や死臭は通常の換気や消臭剤では取りきれないため、オゾン脱臭機や専用の消臭薬剤を用いて分子レベルで臭いを分解します。
また、発生した害虫の駆除が必要になるケースもあります。ハエやウジなどが発生している場合、衛生面の安全を確保するために徹底した対策が求められます。
状況によっては、原状回復やリフォームの提案も行われ、必要に応じてフローリングの張替えや壁紙の修繕もセットで対応するのが一般的です。
特殊清掃を依頼した際の費用の目安
特殊清掃の費用は、部屋の広さや汚染の状況、必要な作業内容によって大きく変わります。ここからは、代表的な間取りごとに費用の相場と作業内容を解説します。
1R・1Kの場合
ワンルームや1Kなど比較的狭い部屋の場合、特殊清掃の費用は7万円~10万円前後が一般的な相場です。作業内容としては、遺体のあった場所の体液除去、消毒、簡易な消臭が中心になります。発見までの時間が短ければ比較的軽度の作業で済みますが、腐敗が進んでいたり浴室などの密閉空間で発見されたりした場合は、脱臭機の使用や害虫駆除が追加され、費用が15万円を超えることもあります。
1DK・1LDKの場合
1DKや1LDKの間取りでは、清掃範囲が広くなるため10万円~18万円程度が目安です。遺体の発見場所が複数ある場合や、汚染が家具や床材にまで広がっている場合は、原状回復のための撤去や内装工事が必要になることもあります。その場合の費用は、20万円以上に膨らむこともあります。
2DK・2LDKの場合
2部屋以上ある場合、特殊清掃の相場は18万円~25万円前後です。リビングや複数の寝室、浴室、トイレなど複数箇所の清掃が必要になるケースが多く、作業時間や人数も増えるため費用が上がります。特に遺品の量が多い場合は、別途遺品整理費用が加算される場合があります。
3LDK以上の場合
広い間取りの場合は、費用が25万円~40万円以上になることも珍しくありません。遺体の発見が遅れて汚染が広範囲に及んでいたり、害虫が複数部屋に発生したりしている場合、対応に複数日かかることもあります。床材や壁紙の張り替え、家具の撤去なども含めた総合的な原状回復作業となるケースも多く、その分コストも上昇します。
このように、特殊清掃の費用は単なる広さだけでなく、発見のタイミング・汚染の度合い・必要な処置内容によって大きく変わります。まずは現地調査と見積もりを行い、信頼できる業者に相談することが最初の一歩です。
特殊清掃業者を選ぶ際のポイント・選び方
特殊清掃は高度な専門性を要するため、業者選びを間違えると費用だけでなく安全性やホテルの衛生環境、イメージにも関わってきます。信頼できる業者を選ぶためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
まず確認したいのが、特殊清掃に関する実績や専門資格の有無です。事件現場特殊清掃士などの資格を持つスタッフが在籍しているか、過去の対応事例が公開されているかをチェックしましょう。また、見積もりが明確で内訳が丁寧に説明されていることも重要です。「一式○万円」といった曖昧な提示ではなく、作業ごとの料金が記載されていることが望ましいです。
さらに、対応スピードと24時間対応の有無も大きな判断基準になります。特殊清掃は時間との勝負になることが多く、早急に対応できる業者であるかどうかも重要なポイントです。また、作業後の消臭保証やアフターフォローの有無もチェックポイントの一つです。
最後に、できれば複数の業者から相見積もりを取ることをおすすめします。料金だけでなく対応の丁寧さや説明の分かりやすさなども比較し、総合的に信頼できると判断できる業者を選ぶようにしましょう。
メリット・デメリットを理解したうえでホテル清掃を外注しよう
ここでご紹介したようにホテル清掃の外注にはメリットもデメリットもあるため、どちらが良いとは一概にはいえません。しかし現時点で仕事がうまく回っていないのであれば、外注を取り入れるのは有効な方法の1つだといえるでしょう。定期清掃のみを専門業者に依頼するなど部分的に外注する方法もあるので、さまざまな条件を考慮したうえで外注するかどうかを決めてみてはいかがでしょうか。